Activity Report
Kit Oisix開発の五十嵐美幸シェフ
「食卓が楽しい場所になるように、いっしょに考えていきましょう」
シェフコラボKit Oisixとしての第一弾「特製チンジャオ焼きそば」が大好評の五十嵐美幸シェフ。次回試作、さらにこの秋バンコクにオープン予定の新店準備で忙しい中、今回の取り組みについてお話しいただきました。
「楽しく作って食べて、それが思い出になる」
五十嵐シェフのお料理といえば、たっぷりの野菜が入ってヘルシーな中華料理。小さいお子さんをお持ちのご家庭では、野菜を食べてもらうのに苦労している方も多いと思います。
「毎日食事を作るって、それだけでたいへんなこと。しかも、お子さんあわせにするってほんとたいへん。自分も主婦をやっていて感じています。野菜をおいしく、バランスよく、そして安心安全なものを食べさせたいという気持ちがみなさんあるはず」
シェフでも、息子の好き嫌い克服の努力は他のママと同じ
写真は、1才8ヵ月の息子さんもご主人も大好物だという常備菜。 ピーマンとたくあんを細切りにして、ごま油で和えただけ!だそうですが、ポリポリ、シャキシャキの食感も楽しくて、ついつい箸が伸びてしまう一品です。
日持ちもするので冷蔵庫に入れておき、もやしを足すなどのアレンジも効く定番おかずだとか。
「たとえばピーマンも、食べさせる側は苦みを気にするかもしれないけど、こうするとポリポリポリポリ(笑)って、食感を楽しみながら楽しく食べてくれる。好き嫌いは味覚が育ってる証拠だからいいことなんですけど、食べてくれない野菜があるときは、お酢を入れたり香りや彩りを考えたりして、少しづつそれになじんで食べてくれるようにと思って努力しています」
「もう、あらゆる方法試してみます。なんできらいなのかな?といろいろ探る。息子は1歳のころにんじんが苦手で、出すたびに全部よけてた。それで、食べやすいように好きな食べ物といっしょに小さく入れあげたり、薄く切ったり。いつのまにかこれもポリポリッといけるようになって、楽しめるようになった。いちど克服したら、あとはどうやっても食べられるようになりました」
「特製チンジャオやきそば」で目指したおいしさは
「チンジャオロースって、唯一といっていいくらいピーマンをおいしくたくさん食べられるメニューだと思うんです。さらにお父さんお母さんにも楽しんでもらいたいので、大人も満たされるような味わいに。
どうしてもお子さんが小さいとそこにあわせた味になってしまうことが多いと思いますが、お父さんお母さんもしっかりおいしく感じてもらい、お子さんも野菜をたくさん摂れる!というところを目指しました」
家庭料理でいつも心がけていること、大事にしたいこと
「季節感をきちんと出してあげたいですね。そこは大事にしていますし、伝えたい。それから、やっぱり野菜をたくさん食べられるように。あとは、あまり強く味つけないように、食材の味を楽しめるようにしています。
いろんなメニューを出す中で、たれも絡めつつも、ちゃんと野菜の味がしっかりわかるように」
日々に追われるけど、楽しもう!と思ってます
「慌ただしく日々に追われるけど、楽しもう!と思ってますね。苦しいと思うと苦しくなるので、楽しむ。それから、疲れたら疲れた!とはっきり、素直に言うんです。 もうねむいんだよー!とか言いたいことは我慢しないで口に出します。でもどっちみちやることには変わりないんですけど(笑)
とにかくストレスをためないようにしてますね」
「作ることはやっぱり好きだし、ありがたい職業だなと思っています。なにしろ、喜んでもらえる仕事なので。心と体力のバランスもあるので、なるべく無理はしないようにとは思っています。が、気づくとどんどん無理なスケジュールになっている(笑)
食材とお客さまをつなげる仕事なので、日本の食材やおいしさを伝えるということは常にこころがけてますね。そのためにこの仕事をやっている、という自覚はあります」
まずは自分の好きな味を知ることが大切
「料理教室もよくやるんですけど、みなさんには“失敗してもいいんですよー”とよく話します。なんでも完璧にしようと思わないで、失敗することがスタートですよって。
食べる人に味をあわせようとしちゃう方が多いんですが、まずは自分の舌を知ることが大切なんです。
どんなに人と同じ食材で同じ分量を入れて作ったとしても、環境で味ってどうしても変わるので、自分がおいしい!と思えばそれでいい、ということをよくお話しします。
それで自分の好きな味が分かったら、初めて相手に合わせてあげることができる。僕はもう少し濃いのが好きだなとか甘いのが好きとか、そこで相手の好みが聞けるようになる。
自分がないと、人に合わせるってことはできない。
自分がおいしい!幸せ!って思える味を見つけましょうねってよく言うの。
主婦ってそのくらい自分を持っていないと大変だと思う。レシピ見て書いてある通りに作っても、これでいいのかな~ってなっちゃう。
自分がおいしいって思えば、それでいいんです!
自信を持って。なるべく食卓が楽しい場所になるように考えていきましょう。ただでさえもう、戦争ですから(笑)」
「何のために作ったのか」があると、安定したお料理に
そう力強くおっしゃる五十嵐シェフにも、最近不安な日々があったそうです。
「息子が、一切離乳食を食べなくなってしまったことがあって。具合が悪くなって胃が弱ったのか、おかゆが全然食べられなくなっちゃった。食べてくれないのはとにかく不安なので、どうやったらおいしく食べられるだろうかと考えました。
そのときに、思い立って白菜を炊いてペーストにしたものをおかゆに入れてあげたら、食材の持っている優しい甘みがミルクに似てるからか、また食べられるようになったんですよ。白菜の、ほっとするような自然の甘みは、心にも身体にも負担がかからない。だから食べられるんじゃないかな、と思ったんですよね。
新しいレシピを考えるときも同じで、雑誌でもテレビでもお店でも、まずコンセプトや目的をしっかり考えるところからですね。たとえば今なら、夏の疲れが出やすいタイミングだから、食べる人に体力をつけさせてあげたい、すっと身体に入ってくるものにしてあげたい、というのがあって、そこから季節の食材を決め、中華の技法を入れて、メニューを組み立てていきます。
小学校の給食メニュー作りもやっているんですけど、地域の野菜を食べさせたいというテーマや目的があって、さらに子どもたちがどんな野菜が苦手なのか、どういうものなら食べられるかというのを聞いた上で、季節を入れて、技法を入れて、メニューにしていくんです。
料理番組で産地を訪ねるときも、素材と、食べていただく生産者の思いや歴史をどう伝えるかというのがまずあって、表現、技法を入れて組み立てる。
料理の絵だけでスタートしちゃうと、味がちらかってしまう。何のために作ったのかという軸がしっかりしていると、安定したお料理になる。下手に自分の気持ちだけ出すとロクなことがないので、そこでは料理人という役割を意識しています」
“愛情をいただいている”と感じられること
「わたしの母親ってちょっと天然で、いまだにわたしが料理を作ってるって思ってないくらいの人なんですけど、両親はお店も忙しかったこともあって、子どもの頃はあまりごはんを作ってもらえなかった。まかないも小さいころから自分で作ってたほどなんです。だから、そんな中でも時々親が作ってくれるごはんは、ことさら嬉しかったですね、それがおいしいかは別として(笑)
愛情をいただいていると感じられること。楽しく作って食べて、それが思い出になることが大切。
まだ息子はあまり喋れないけど、食卓では『とうもろこしおいしいね~』とか、たくさん声かけてます。どこかで分かってるはずだから『ママこれ一生懸命作ったんだよ~』など、ちゃんと言います。
この時期の毎日のごはんは大変でも、おいしいって言われるとそのぶん嬉しいから、それを手助けできるようにしていきたい。
野菜を残されてしまうのはいやなので(笑)、これからも満足いただけるKitメニューを作りたいですね。