Activity Report
眠っている古着がスラムの子どもたちの未来を広げます
皆さまのご自宅で不要となった古着を送っていただくことで、パキスタンのスラムで育つ子どもたちが学ぶ機会を得られ、よりよい暮らしを目指すことができます。大地を守る会では1999年から、オイシックスは昨年から、この活動をサポートしています。
【支援の現場から】アル・カイールアカデミーのムザヒル先生「教育とともに子どもたちの心の中を知ることを大切にしています」
ムザヒル先生が自身で学校を設立したのは1987年のこと。大学在学中からスラムの子どもたちに教科書を無料で配るボランティアをしていましたが、スラム地域ではインフラや勉強できる環境自体が整っておらず、学校そのものの必要性を感じて、ゴミ捨て場にバラックを作り10人の生徒とスタートさせました。
立ち上げ当初は、資金調達の問題や、地域の人たちから活動に対する理解が得られず、反対する人たちの妨害もありました。親自身が読み書きのできない人が多く、教育の意味は簡単には理解されませんでした。子どもたちには学校へ行くよりむしろ家計を助けるために働いてほしいという気持ちが強かったそうです。
ムザヒル先生は親たちに教育の必要性を根気強く説きつづけ、その結果、学校で学ぶ子どもたちは徐々に増え、今では、学校運営は地元の人々からも認められるようになっています。
「学校で学ぶことや、先生や友人と触れ合う機会を通して、生徒たちが自分で考える力、善悪を判断できる能力を身に着けていくことが本当の教育だと思います」とムザヒル先生は言います。
「そして、子どもと話しながらじっくり様子を見て、心の中を知ろうとする事も大切にしています」。それは虐待を受けている子や、スラム出身ということによる差別で、自分は誰からも関心を持たれていないという不安を抱えている子も多く、心のケアも必要だと感じているからだそう。「勉強を教えるだけでなく、子どもときちんと向き合うという信念が、他の先生にも引き継がれていってほしい」と、教育に対する熱い想いは止まることなく未来へと向かっています。
真剣な眼差しで先生に教えてもらう生徒
休憩時間に笑顔だった子どもも授業になるととても真剣。学校を卒業した生徒には、大学に進学する子や薬剤師になった子も。また自分が学んだこの学校の教師として戻ってくる子もいます。
ゴミ捨て場の中にある学校
現在は、校舎が9つ、生徒数は約4500人。生徒はすべて無料で学んでいます。もっとも大きい校舎には、2500人が通っています。校舎の一つ、第二分校があるのは、ゴミ捨て場の中。ゴミの中からお金になるものを探して生活をしている家族の子どもたちが通っています。
【スタッフ現地レポート】「厳しい環境の中で、素敵な連鎖を起こしている活動です」
アル・カイールアカデミーを訪問した最初の印象は、明るい子どもたちの笑顔でした。外国人はめずらしい様子で、休み時間になると興味津々な顔で「遊ぼう!」と教室に招き入れてくれました。その元気な様子は、日本の子どもたちと何も変わりません。一方で、校舎内は打ちっぱなしのコンクリートの部屋に黒板のみ。床に布を敷いただけで照明も机や椅子もない教室がほとんどの質素な環境でした。しかし子どもたちの勉強する姿勢はとても真剣。
それは自分の意思に関係なく、突然勉強ができなくなることがめずらしくないからかもしれません。実際、家の手伝いや家計を支えるために働かなくてはならなくなり、退学する子も少なくないのだそうです。
これまでの支援によって、アル・カイールアカデミーでは10校目となる校舎の建設をしています。宗教上の理由で男性と別環境で学ぶことを望む家庭も多く、年頃を迎えた女の子もその家族も安心して通わせられるように、この10校目の校舎は女子校になる予定です。
このような持続的な挑戦は、送っていただいた古着を元にした資金などで支えられています。不要となった古着がパキスタンに送られ、その古着を売った資金で子どもたちが学び、そしてその子どもがまた次の世代を育てる親や先生になる連鎖を目の当たりにしました。この素敵な連鎖がさらに大きく広がり、子どもたちの笑顔が未来に繋がることこそが、この活動を続けていく意義であると深く感じました。
(オイシックス・ラ・大地 豊後愛美)
古着回収で得た資金はこんなことに活用されています
教科書や文具の購入、子供たちの給食、先生の給料などに使用されています。
NPO法人JFSA(日本ファイバーリサイクル連帯協議会)がこの活動を行っています
1993年に不登校児らとリサイクルショップを経営していたスタッフが、パキスタンの人々と出会ったことからこの活動が始まりました。古着の回収、選別、パキスタンへの送り出しなど、アル・カイールアカデミーの運営をサポートしています。
※日本(千葉市・柏市)では古着の販売も行っています。