モニタリングに同行しました【2022年】

Activity Report

モニタリングに同行しました【2022年】

2022年6月14日に福岡市内の須恵川に設置している石倉カゴのモニタリングをしました。
これは、九州大学大学院農学研究院水産増殖学分野でうなぎを研究している九州大学特任教授の望岡典隆先生と、学生が中心に行っているものです。
モニタリング調査は、川の水位が下がり作業がしやすい大潮の干潮時に実施します。

ニホンウナギが5匹見つかりました!

今回は前日までの雨でやや水量が多いうえ、作業中に上流での放水による増水が重なったため3基あるうちの1基のみのモニタリングとなりました。
その1基で見つかったニホンウナギは5個体で、全長26.7~57.9cm。57.9cmの体重は317g、胴回りは10.7cmとこれまでのモニタリングのなかでも最大級。「この大きい個体は銀うなぎになりつつあります。これは今秋にもマリアナ海域の産卵場に行くかもしれない」とは望岡先生。今回の5個体にはそれぞれICタグをつけ元の須恵川に放流しました。

うなぎにとってよい環境か否か

ニホンウナギはシラスウナギとなって河口域に来遊し、やがて黄ウナギとなって5年から十数年、河川等で成長します。その後、川を下り、海水と淡水が混ざり合う汽水域で産卵回遊へ旅立つ準備をします。従って汽水域の環境はニホンウナギが増えるためのカギを握っています。
しかし、河川の汽水域は、平野部にあるため人口が密集しやすい地域でもあり、私たちのくらしを洪水など等から守るために岸辺は空隙のないコンクリート等によって護岸化され、ニホンウナギの生息場所の劣化が進んでいます。

うなぎが好む次の石倉カゴを目指して

須恵川で石倉カゴを設置しているエリアも汽水域。新幹線の線路から近く、幹線道路や病院、学校にも隣接している場所。ここに石倉カゴを設置して3年、今回のように大きな個体のニホンウナ ギが確認できるなど、隠れ場所として石倉カゴが馴染んできた手ごたえを感じています。
「石倉カゴ を高頻度で利用している個体はそうでない個体に比べて栄養状態がよいものが多い」と望岡先生。
現在、石倉カゴはニホンウナギの生息環境改善を目的とした国の事業としても、全国の河川に設置 されつつあります(*1)。望岡先生は、石倉カゴに詰める石の大きさによって、どの成長段階のウ ナギが好むのかなどの研究もすすめています。

*1:水産庁内水面漁場・資源管理総合対策事業や水産多面的機能発揮対策事業

2021年度の寄付金額

2021年に集まった寄付金額は総額488,350円(2021年4月1日〜2022年3月31日)。
ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。
須恵川でのモニタリングは国の事業の対象外のためみなさまの寄付に支えられています。
望岡先生は「子どもたちには“ウナギがこんな身近な街中の河川に住んでいること”を知ってもらいたい。隠れ家が少ない川やコンクリート護岸化がウナギの生息に影響することに目を向けて欲しい。」との想いから中学校の目の前で実施しています。今秋には、昨年同様に配合餌料を使用せず、天然のウナギが好んで食べているユスリカの幼虫で育てた稚魚の放流を予定しています。

是非今後とも応援をよろしくお願いいたします。


▼ニホンウナギの各生活史段階における石倉カゴの浮石間隙構造への選好性:汽水域のハビタットの効果的な復元に向けて
https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan/88/3/88_21-00043/_article/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan/88/3/88_21-00043/_pdf/-char/ja

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