気候変動対応(TCFD提言に基づく情報開示)

基本的な考え方

オイシックス・ラ・大地は、自然とともに持続的に事業を発展させるためにも、温室効果ガスの排出量削減に積極的に取り組むことが重要であると考えています。

当社グループは事業における環境負荷を理解し、気候変動が当社グループの今後の持続的な成長に影響を及ぼすことを認識したうえで、地球温暖化の原因となるCO2排出量の削減、使い捨てプラスチックの使用削減、フードロスの削減など、環境負荷を低減するための提案・活動を行います。 今後も環境パフォーマンスの向上に取り組むとともに、ホームページなどを通じて積極的に情報開示を行います。

TCFD提言への賛同と取組み

TCFD
当社グループは、気候変動への対応は重要な課題ととらえ、金融安定理事会(FSB)により設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に2022年より賛同を表明し、その提言を踏まえ、気候変動への取り組みを進めるとともに、情報開示の高度化を進めています。

ガバナンス

気候変動に関連するリスク・機会に関しては、経営企画部門が検討し、代表取締役社長が参加する執行役員会において議論をしています。

今回実施したシナリオの分析にもとづく気候変動に関連するリスク・機会および環境に関するグループ会社共通の目指す姿である“サステナブルリテール(持続可能型小売業)”の実現に向けた活動の進捗は、適宜役員会や取締役会に報告し、監督が適切に図られる体制をとっています。
また、自然災害リスクを検討するリスク管理委員会では、四半期に1回執行役員会に定例報告を行い、リスク案件について議論し、承認を受けています。リスク管理委員会が対応した特記すべき事項については、取締役会に報告を行っています。

戦略

当社グループは、「これからの食卓、これからの畑」という企業理念のもと、食に関する社会課題を、ビジネスの手法で解決することで、持続可能な社会の実現を目指しています。 主要セグメントである国内宅配事業「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」をはじめ、「とくし丸」「Purple Carrot」等子会社も含めたあらゆる事業を通じ、食の社会課題を解決することを事業成長の糧としています。

気候変動は、食に関する社会課題の中でも世界的に年々大きなリスクとなっており、私たちにとっても農作物の生育状況の変化、自然災害の甚大化による調達、配達物流への影響等のリスクがあります。

シナリオ分析

当社グループは、気候変動の異なるシナリオ下でのリスクと機会を特定するため、TCFDの提言を踏まえ、シナリオ分析を実施しました。
2100年に産業革命前から1.5℃気温が上昇するシナリオ(1.5℃シナリオ)と、4℃上昇するシナリオ(4℃シナリオ)における2030年時点での気候変動による影響をリスク・機会それぞれに関して検討しています。

そのためにまず、各部署の代表者と具体的なリスクと機会を洗い出し、当社グループおよびバリューチェーン全体への影響を踏まえ、より影響の大きいものを抽出しました。抽出したリスクと機会に対して、定性・定量的な方法で評価を実施し、財務的な影響度を確認しています。

◆シナリオ分析による影響度評価(財務影響評価)前提としている主なシナリオ

シナリオ 主に参照したシナリオ
1.5℃シナリオ SSP1-1.9シナリオ(IPCC,2021)
Net Zero Emissions by 2050シナリオ(IEA,2021)
4℃シナリオ SSP5-8.5(IPCC,2021)
Stated Policyシナリオ(IEA,2021)

a.抽出されたリスクと2030年時点での影響 財務影響度の金額イメージ(大:10億円以上、中:1~10億円、小:1億円未満) ・移行リスク

分類 時間軸 財務影響領域 可能性のある事業インパクト 影響度
1.5℃ 4℃
政策と法 炭素税の導入 中~長期 コスト ‐農作物・水産品・畜産品等の原材料・仕入れコストが上昇する。
‐工場及び物流・配送のエネルギーコストが上昇する。
プラスチック規制の強化 中~長期 コスト ‐プラスチック規制が強化されることで、包装材における代替素材の開発・導入が求められコストが上昇する。
その他環境規制の導入・強化 短期 コスト/資産 ‐環境関連規制強化への対応による設備投資の増加や、食品安全基準等の見直しへの対応コストが上昇する。
業界/市場 消費者の環境志向の変化 中~長期 収益 ‐環境への取り組みや非財務情報の開示が不十分な場合、消費者からの支持が低下し、ブランド力の下落や顧客離れによる減収が発生する。
エネルギー需給の変化 中期 コスト ‐化石燃料を用いたエネルギー調達コストが上昇し、原材料・仕入れの生産コストやガソリン車(現車両)の利用による配送コストが上昇する。
‐再エネ調達需要の高まりにより、再エネ価格や再エネ対応切り替え設備の稼働価格が上昇する。
投資家の評判変化 中~長期 資本 ‐気候変動への取り組みや非財務情報の開示が不十分な場合、投資家からの企業評価が低下する。
テクノロジー 農・水産業における生産イノベーション 中~長期 コスト/資産 ‐農・水産業がスマート農業等脱炭素モデルに移行するために最新設備等を導入することでコスト負担が上昇する
物流・配送におけるイノベーション 中期 コスト/資産 ‐配送車両の電気自動車へ置き換えに伴い、コスト負担が上昇する。

・物理リスク

分類 時間軸 財務影響領域 可能性のある事業インパクト 影響度
1.5℃ 4℃
急性 異常気象の激甚化 短~長期 コスト ‐集中豪雨や台風によって生産地域の浸水被害や、物流網の混乱が発生し、商品の調達ができなくなる。
慢性 調達・供給体制への影響 長期 コスト/収益 ‐気候変動による直接的・間接的な収穫量の低下により、調達必要量の確保が難しくなる。
‐需給バランスの調整が難しくなり、欠品や廃棄処理の増加が懸念される。
‐高温により農作業効率が低下し収穫量が減少する。
品質への影響 長期 コスト/収益 ‐当社グループが設定する水準の品質確保が難しくなる。
‐顧客への配送時に、冷凍食品を中心に品質担保が困難になる。
コスト構造への影響 長期 コスト ‐原材料・資材等の仕入れコストが上昇する
‐人材不足や操業可能設備不足等からコスト負担が上昇する。
消費者の食ニーズ全般の変化 長期 収益 ‐消費者の生活における気候変動への適応負担が増加し、食費支出そのものが減少する。

※影響度は、当連結会計年度末現在において取得可能な情報をもとに算定しうる範囲で記載
※定量評価は、2030年時点まで2022年3月期と同様の事業規模拡大が続いていることを前提に評価

b. シナリオ分析を踏まえたリスクへの対応と、対応から生まれる機会

分類 対応 機会
炭素税の導入 ‐カーボンニュートラルの達成 ‐省エネの積極的な導入によりコスト削減ができる。
‐カーボンニュートラル達成により、炭素税の負担を減らせる。
プラスチック規制の強化 ‐商品パッケージのさらなるグリーン化 ‐代替プラスチックの新包装材の先行導入により差異化をはかる。
その他環境規制の導入・強化 ‐食品安全基準の強化
‐特定フロン排出抑制
‐カーボンフットプリント開示規制の強化により、自社の優位性の訴求や、その他環境配慮に対する補助金導入による金銭的なメリットを享受する。
消費者の環境志向の変化 ‐アップサイクル食品の販売推進
‐商品パッケージのさらなるグリーン化
‐環境志向・ニーズの高まりに的確に対応し、顧客との関係性を構築・向上させることで、ブランド力や既存顧客との関係性が強化されるだけでなく、新たな顧客開拓・既存顧客のロイヤリティ向上へも繋がる。
エネルギー需給の変化 ‐省電力化
‐オフィス・全物流拠点電力に再生エネルギー導入を推進
‐グリーン配送や、省エネ設備の早期導入等によりコスト負担を抑えられる。
農・水産業における生産イノベーション ‐「サステナブルリテール」の強化 ‐環境負荷が少ない食材の製造等、フードテックの活用・開発促進によりニューフードの市場を活性化する。
‐冷凍食品、加工生産、可食化技術も含めたイノベーティブな生産、安定供給体制を先行して構築し差異化をはかる。
物流・配送におけるイノベーション ‐配送車の省エネルギー配送とEV化の実証実験 ‐自動運転技術やドローン技術等を用いて、気候変動に影響を受けにくく、顧客の利便性の高い物流・配送体制を先行して構築する。
異常気象の激甚化 ‐「サステナブルリテール」の強化
‐良質なサプライの拡大
‐ローコストオペレーション、マーケティングノウハウ共有による収益力改善
‐生産地の多様な地理的ポートフォリオにより、局所的な収穫不良時でも商品の安定供給が図れる。
調達・供給体制への影響 ‐トレーサビリティのデータを有効活用し、需給調整を綿密に実施し、安定供給が図れる。
‐国内外での収穫可能性の拡大を想定し、安定生産できる栽培、生産方法の確立を後押しする。
品質への影響 ‐従来の小売流通基準に満たない原材料(B級品)の活用機会を増加させ、顧客にもその価値を理解してもらうことで、新たな訴求要素を確立する。
消費者の食ニーズ全般の変化 ‐熱中症予防や備蓄可能な食品に対するニーズが高まる。
‐外出の困難化から宅配そのもののニーズが増加する。

リスクマネジメント

当社グループはリスクマネジメントのための組織として「リスク管理委員会」を設置しています。管理委員会は社長直轄の組織で委員長と各部署を代表する委員と事務局で構成されています。
リスク管理委員会は気候変動によるリスクを含む自然災害リスクについても検討しており、毎月会議を実施し、リスク事例の共有、部署横断的なリスク対応についての議論、各委員の活動報告を行っています。四半期に1回リスク管理委員会から執行役員会に定例報告を行い、各リスク案件について議論し、承認を受けています。

◆温室効果ガス排出量推移 排出量:CO2排出総量[t-CO2e]
原単位:CO2排出総量原単位(売上高あたり)[t-CO2e/百万円]
項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
排出量 排出量
原単位
排出量 排出量
原単位
排出量 排出量
原単位
スコープ1(※1) 2,468 - 1,224 - 1,131 -
スコープ2(※2) 5,308 - 45 - 43 -
自社排出量
(スコープ1+2)計
7,776 0.08 1,269 0.01 1,174 0.01
スコープ3(※3) 287,705 - 281,278 - 302,831 -
サプライチェーン排出量
(スコープ1+2+3)計
295,481 2.86 282,547 2.45 304,005 2.60

(※1):事業業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス等)
(※2):他社から供給された電気・熱・上記の使用に伴う間接排出
(※3):スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
※算定方法:排出量の算定はGHGプロトコルに基づく
※GHG算定における組織境界(バウンダリ)は、算定期初における財務支配力基準を採用し、オイシックス・ラ・大地株式会社単体に加え、子会社3社(Three Limes,Inc.・株式会社フルーツバスケット・株式会社とくし丸)を算定範囲として設定。

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